第31回通常総会を開催するに当たり、一言ご挨拶を申し上げます。

ご来賓の各位にはご多用中にもかかわらずご臨席を賜り、誠にありがとうございます。

会員の皆様も多数ご出席を頂き、感謝に堪えません。

本年は都中建創立30周年という節目の年にあたります。本来ならば、それなりの周年行事などを計画しなければならないところでございますが、中小建設業 を取り巻く環境があまりにも厳しいため記念行事等は一切行わないことといたしました。何卒ご了承を頂きたいと思います。

90年代の後半からデフレ不況はますます長期化し、深刻化しております。建設投資額はピーク時の84兆円から2003年度予測54兆円と実に36%もの 減少であります。建設産業はいまや完全に供給過剰産業となり、再編、淘汰の波に翻弄されております。中でも弱い立場の中小建設業には倒産、廃業が続出して おり、時には悲惨な話も聞こえてまいります。

この窮状を打開するため、先日建設業主要7団体の長は公共事業予算の前倒しと、その後を繋ぐ補正予算の編成などを政府、自民党に要請いたしました。業界 団体としては切羽詰った要請行動でありましたが、国も自治体も極度の財政難であり、公共事業に対する逆風も吹いております。政策として実を結ぶにはなお幾 多の障害が予想されます。

中小建設業が、この厳しい時代を生き抜くためには、「攻め」と「守り」の二つの道があります。「攻め」とは経営革新と新分野への進出であり、「守り」と はキャッシュフローの改善であります。これらのことを経営者として十分に理解し、経営判断をなさなければなりません。新分野進出は冒険ですが大切なのは一 歩踏み込むことです。会社経営に人の情けを期待してはなりません。新分野進出の参考となる資料や専門家の講演ビデオ等は協会に用意しておりますので、ご活 用頂きたいと思います。

また、協会の構造改革委員会も、会員の皆様の声をバックに中小建設業生き残りの道を活発に議論しております。結論を得ましたならば、協会として具体的な行動を起こしてまいります。

東京都は昨年に引き続き、本年4月から入札・契約制度の改正を行いました。キーワードは「優良工事にはインセンティブ」を、「不良工事にはペナルティ」 をというものであります。基本的方向としては納得できるものであり、評価をいたします。しかし、昨年4月以来、その後の実施状況をみてみますと、受・発注 者を、それぞれ立場の違いにより見解の分かれるところがございます。例えば、予定価格の全面的な事前公表は、熟慮の上実施されてものとは思いますが、中小 建設業の案件では多くの場合、最低制限ぎりぎりの価格で同額入札、くじ引きによる落札という案件が頻発しております。受注者からみれば、積算も無く、企業 努力もなく、最低制限価格にあわせて行う運頼みの入札制度と言わざるを得ません。知恵を出し合って、この制度を再検討することが必要と考えます。

また、本年度から東京都においても一部で電子入札が始まります。中小建設業にも16年度から全面的に導入されることになると説明されております。ⅠT対 応ができなければ公共工事への入札参加は不可能となります。協会といたしましても4月理事会におきまして、IT特別委員会を設置し、情報収集や実務研修に 対応する体制を整えました。研修の機会等は逃さないようにし、時代の変化に対応をとって頂きたいと思います。

激動する時代の流れの中では中小企業は不安定な存在ではありますが、日本の企業の99.3%は中小であります。建設業も同様であります。日本経済は中小 の固まりによって維持されていると言っても過言ではありません。中小企業に元気がなければ日本経済も元気にならないのであります。ところが世間では「弱い 者は市場で淘汰されても仕方がない」などという声があります。これらの意見には強い憤りを感じます。

中小建設業を活性化するには、先ず受注の確保でありますが、次いで大事なことは、金融であります。銀行の貸し渋り、貸し剥がし対策として東京都の石原知 事は、中小企業のために新たな銀行を設立するという公約を掲げて再選されました。私達はこの政策を歓迎いたします。

また、中小建設業については、数年前に国が創設したセーフティネット融資事業という制度があります。ところが、これが東京都では現在利用できません。そ れは発注者としての東京都が転貸融資の前提となる債権譲渡を認めていないからであります。都内の中小建設業者が一日も早くこの制度を利用できるようにな り、多様な金融ルートの活用で中小建設業の一層の活性化が図られることを願って止みません。

いろいろ申し上げましたが、中小建設業は未曾有の危機に晒されております。都中建30年の栄光の歴史の上に立って、会員一同一致協力、難局を乗り切り、更なる前進を遂げようではありませんか。

本総会には平成14年度事業報告他4件の議案が上程されております。それぞれご審議の上、ご決定賜りますようお願いし、ご挨拶といたします。

平成15年5月29日
社団法人東京都中小建設業協会
会長 吉田建三

挨拶をする吉田会長
来賓の方々
都中建会長・副会長・会計理事・顧問