社団法人全国中小建設業協会

会 長 樋 口 吾 一

平成16年の年頭にあたり謹んでご挨拶を申し上げます。
わが国経済にも、ようやく回復の兆しが見え始めてきたということですので、本年が明るい年となるよう願いたいものであります。

しかしながら、私ども中小建設業者にとっては、回復の兆しを実感する状況
には程遠いものがあり、経営環境は一段と厳しさを増しております。

ご承知のとおり、建設投資は激減を続けており、特に、中小建設業者が命綱とする公共事業は、財政悪化等によって国も地方も急激な勢いで削減されております。

これらの影響で、受注競争は激化し、ダンピング受注も横行しております。また、残念なことに地方自治体においては、ダンピングを助長するような入札制度も広がり、さらには、くじ引きで落札者を決めるような異常な入札も増加しております。

関係方面に要望している補正予算も、景気刺激のためには編成しないということですので、災害復旧を除くと公共事業の追加は、ほとんど困難な状況にありま す。また、来年度の予算においても、公共事業は削減される方針であり、さらに、今後も引き続き公共事業の削減が打ち出されており、この度の第2次小泉内閣 発足にあたっても、構造改革路線を堅持していくことを表明しておりますので、公共事業には、何一つ明るい材料が無いような状況に置かれております。

これまで、私ども中小建設業者は、真面目に努力してきた多くの仲間を悲惨な倒産や破産で失っておりますが、先行きにも明るさが見えず、また、体力も限界に 達していることから、さらに倒産等による犠牲者が増え続けるのではないかと大きな懸念を抱いております。

私どもは、長年にわたって全中建ビジョンで掲げました「社会に奉仕する力強い地場産業」を目指して、中小建設業者がその使命を全うできるよう努力しており ますが、これには、何としても地元中小向けの公共事業を確保するとともに、ダンピングを防止することが不可欠であります。

このため、私どもは、これまでも中小の受注分野確保を最大の課題として取り上げ、国に対しましては、公共事業予算の増額や官公需法による中小向けの契約比 率を高めていただくよう努力を続けております。また、地方財政の「三位一体」改革に注目しているところではありますが、これまで、国庫補助事業のみならず 地方の単独事業を推進していただくために、地方自治体への財源確保のための施策を講じていただくよう強く訴えているところであります。

これらの施策については、今後とも要望を続けていかなければなりません。特に、官公需法に関しましては、種々議論があり厳しい状況下ではありますが、まだ まだ十分とは思えませんので、引き続き、地場産業として大きな役割を果たしております中小建設業者の受注分野確保のために、強く訴えて参りたいと存じま す。

ダンピングにつきましては、私どもも適正な価格での受注を心掛けねばなりませんが、品質や安全の確保を図るためにも、何としても防止しなければなりません。

国土交通省では、いろいろ対策を講じられ、直轄工事においては、かなり効果を上げているように聞いておりますが、私ども中小業者の主な受注先は、都道府県 や市町村でありますので、今後とも、国土交通省に指導等を強化していただき、地方自治体の改善が図られるよう、不良・不適格業者の排除と併せて、さらに要 望を続けていきたいと思います。

ほかにも、対応しなければならない問題が山積しております。ご承知のとおり、入札契約制度をめぐってはいろいろ問題が生じておりますし、国土交通省では、 電子入札も始まりました。また、PFIやCMといったことも影響を受ける身近な問題となってきております。これらの入札契約制度改革への対応をはじめ、団 体に加入する企業への優遇措置や経審見直し問題、建設業法に基づく技術者制度の問題、近年大きく取り上げられるようになってきた中小建設業者の再編・淘汰 問題、建設CALS/ECや情報化への対応、通常国会で予定されております独禁法改正問題、若手経営者育成など、まだまだ多くの課題を抱えております。

本年も厳しい状態が続くものと覚悟しなければなりませんが、状況を正確に把握して適切な対応を図りながら、一致団結してこの苦境を乗り越えなければなりません。

私ども全中建は、本年、社団法人として40周年を迎えますが、中小建設業者の皆様におかれましては、なお一層のご支援ご協力を賜りますようお願い申し上げます。