建設投資の回復が望めないとすれば、中小建設業者は、転業、廃業、又は新分野進出かという選択肢が有力となる。政府は、平成14年度補正予算で、「建設業 セーフティネット構築緊急事業」を実施した。都中建もこの事業の委託を受け、いくつかの事業を企画し、実施した。会員及び中小業者に対して大いに効果が あった。
新分野進出と口では云うが、長年工事の施工を中心としてきた業者が事業の転換を行うことは容易なことではない。ツルハシを持つ手で明日からIT産業と云う わけにはいかないのである。勢い建設業の周辺分野を中心とした事業展開を考えざるを得ないであろう。全国規模で調査された事例集も纏められている。それぞ れ苦労の跡も見える。地方では農業分野への進出が多く見られるが、都市部ではそれができない。都市部で何ができるか、きわめて狭い道を進まなければならな い。
喜ばしいことに、都中建の会員の中にも周辺分野への進出事例を聞く。経営者の事業転換の熱意を感じることができる。しかし、これらは目下少数であり、進出事例については企業秘密扱いである。これを公表しても皆でやるだけの事業量がないからだ。
生き残る道は新分野だけではない。「建設業の再生に向けた基本指針」では、建設業の再生は、
- 不採算部門からの撤退・縮小と収益性の高い事業部門への経営資源のシフト、本業の強化による経営基盤の強化
- 「受注高」から「事業採算性」重視への転換による収益性の向上
を進めることを基本とすべきと述べられている。しかし、大手には当て嵌まることであろうが、前述したように受注のために採算無視の過当競争を日常化してい る中小建設業は、本体自体が不採算と云わざるを得ない。又、再生のための諸法制も中小建設業に使えるものは少ない。やはり中小建設業には、中小向けの独自 の施策と加えて業者の自助努力が期待されるのである。