1. 入札契約制度の再検討

    汚職防止委員会検討の結果を受けて、東京都は予定価格の事前公表に踏み切った。これはこれで一つの決断であると評価する。しかし、その結果、最低制限価格 ギリギリに入札価格が集中し、同札、くじ引きが多発することは正常な入札制度とは云えない。最低制限価格を廃止し、低入札価格での落札案件について徹底し た施工管理体制をとるより外に方法はないのではなかろうか。材料チェックから工事監督のベタ付けまで行うことは発注者に大きな負担となる。

    この道はいつか来た道なのである。日本の入札制度の歴史をもう一度振り返り、相互信頼関係を保てる入札制度への再検討を要望する。

  2. 中小同士のJV結成

    雇用対策の分野ではワークシェアリングという考え方があり、外国では既に実施されていると聞く。この発想を東京都の中小建設業界に導入して頂きたい。9億 円以下の工事で、施工難易度の高くない案件について、中小業者2者、3者の共同企業体を組み、申込をさせる方法である。中小建設業の受注機会の確保に役立 つものと考える。

  3. 地域建設業者に対する再生指導と支援

    建設投資の大幅減で建設業者は倒産の山を築いている。国交省も業界の再編、再生を呼びかけて基本方針が示されているが、中小に対する施策は見えておらず、別項において行動計画の早急な作成を要望したところである。中小建設業は地域に根ざしており、それぞれ事情が異なる。そのため、全国共通の施策の立て難い面がある。従って、中小建設業に対する施策は地方自治体が中 心になり、独自の展開を進めることが効率的であり、実情に合うものと思われる。16年1月、政府が募集した地域再生構想の中にも、熊本県や長野県から地元 建設業者の振興等が提案されている。東京都においても中小建設業5万社の再生についての施策を打ち出されるよう期待する。

  4. 入札参加業者の格付けにおける主観点数の見直しについて

    建設業者には客観的データから一定の数値による評価がなされている。これを経審点数と称している。各自治体では、これに独自の項目を追加し、これ を主観点数としている。東京都の場合は過去の1件工事実績を用いている。近時のように入札制度に対する考え方も変わり、優良業者にはインセンティブ、不良 業者にはペナルティをという時代になってくると、今まで以上に業者の実態に基礎的なデータ並びに工事実績を正確に加味する必要がある。東京都においては主 観点数をあらためて見直し、防災計画参加や公益法人加盟の有無なども考慮され、より正確に実績が評価される制度を検討されるよう要望する。

  5. 過当競争の及ぼす影響について

    公共事業は、国民の税金によって実施されるものである以上、完全な競争によって価格が形成されなければならないことは云うまでもない。しかしながら、競争が激化し、採算無視の安値が出現する場合に生ずる影響も自治体としては無視できないと考える。

    一つは労働賃金の切下げによる技能者問題である。最近のように競争が激しく、安値受注が行われると、労働者賃金の引下げが行われてくる。それも腕のいい高 賃金の技能者が先に働く場所を失う。このようなことになっては、日本の建設技能の承継ができなくなってしまう。一例で云えば、大工という職種はステータス も高く、賃金も安定していたのに最近の大工の賃金では生計の維持が困難なため、大工になる人が極端に減ってきて、政府は大工養成塾なる制度まで設け、後継 者問題に乗り出している現状である。

    また、土木関係で云えば、地域業者は一定の技能者を抱えているという前提で地域防災計画の中に組込まれている。自治体と建設業協会が協定を締結し、災害時 に要請により出動し、啓開道路の確保や水防などを行うことになっているが、建設業者の確保している技能者が計画を大幅に下回っては、いざという場合、防災 計画は全く機能しない。これでは人命にも影響が及びかねないのだ。入札制度の改革が意外なところまで影響が及ぶということを認識し、総合的配慮をお願いす る。

    更に、憂慮されることは、安全対策の経費が削減され労働災害の多発傾向にあることだ。これ又人命に係る問題として無視できないことである。