国交省の基本方針6には、中小・中堅建設業再生の指針が示されている。総論についてはその通りであるし、申分ないと思う。しかし、書かれていることが実行性を伴わなければ理想論になり、画餅に終わる。

  1. 不良不適格業者の排除の徹底
    主旨賛成である。業界の内側から見れば、施工能力等から見て不適格ではないかという疑問のある業者も不良業者も確かにいる。しかし、これらの業者も業法に 基づく審査を経て許可されており、形式上の差はない。そこに不良不適格業者対策として打ち出されているのが、技術者の専任制であり、施工体制のチェックで ある。この方法では、不良不適格業者のみならず、適格業者にも影響が大き過ぎるのである。例えば、2,500万円程度の土木工事に技術者の専任を求め、し かも3ヶ月以上の在職実績を求める条件では、中小建設業者は絶対に採算に乗らない。企業経営の視点ももう少し加味して欲しいというのが多数の声である。 

    東京都の小額土木工事には、最近、極端に申込者が少ないという。中小建設業者としてこれ程仕事の欲しい時期に、さりとて赤字は困るという現象なのだ。正面 きって発注者に意見を云えず、泣く泣く申込を控えるという業者の悲しい性を感じる。都では、ロットの拡大を図らなければと云っているが、原因は何処にある か、小規模業者の実態をよく調査して適切に対応して頂きたいものである。現行のやり方では、不良不適格業者と正常な業者を同時に締め上げる結果になってい る。例えは良くないが、抗癌剤治療のようなもので、癌を押さえるため正常細胞にも副作用が出るということである。

    技術者問題についてのみならず、大事な工事の発注に当って業者の実態、能力を調査しない施主はいない筈だ。許可や経審点数のみを過信してはならない。

  2. 経営革新の推進
    IT化と新分野の進出が提案されているが、いずれも将来的に必要なことである。しかし、現在行われている専門委員会の審議状況を聞くとITを経営に取入れることについて大手と中小の間に相当のギャップを感じているようである。しかし、電子入札や電子納品も始まる。いずれ材料仕入れや下請選定についてもIT時代になるだろう。中小といえどもこの問題を避けて通れないことは十分認識している。業界団体としても自らの役割、すなわち研修や演習を通じた普及活動を、十分に果たしていかなければならないと考えている。現状は過当競争で、コスト管理や収益の確保が危ぶまれる状況であり、多くの中小建設業者は、IT化や経営革新に目が向いていないと云わざるを得ない。そこで中小建設業者のために行政からの支援があれば大歓迎である。
  3. 企業間連携の促進
    IT中小建設業にとって、金融(役員の個人保証)の問題もあり、暖簾のこともあり、合併や連携は難しい問題である。しかし、これらを十分に理解された上での提言であるので、これから業者に十分に理解を求め、研究していかなければならない。これからPFIが取り入れられることが多くなるとすれば、SPCも検討課題となってくる。都中建としては、それ以前の仕組みとして工事のワークシェアリングともいうべき共同受注方式を提案している。
  4. 中小・中堅建設業者の再生支援
    現に行われている再生支援相談事業の実績等を見ると、ことの成否はあげてメインバンクの姿勢如何によると云われている。生かすも殺すも銀行次第である。
  5. セーフティネットの整備
    都中建もこの事業に賛同し、協同組合を通じ、この事業に取組んでいるところである。受入体制は完了している。発注の大部分を占める東京都を始めとする自治体の債権譲渡の承認如何である。近い将来実現するものと信じている。